公開オークション

LOT 043

オシップ・ザッキン

旅の終わり

JPY 1,000,000 - 1,500,000
HKD 50,100 - 75,200
USD 6,400 - 9,600
技法 グアッシュ、紙
サイン 左下にサイン、年代
額装
サイズ 64.9×48.7 cm
制作年 1950
鑑定書 ザッキンリサーチセンター鑑定委員会鑑定証書付

HIGHLIGHT

オシップ・ザッキンは1905年にリージェント・ストリート・ポリテクニクで学び、その後1910年にパリへ移住した。パリでの経験は、その芸術的形成に決定的な役割を果たした。印象主義以降に開かれた新たな視覚表現の潮流と、パブロ・ピカソやアメデオ・モディリアーニら前衛芸術家が集う刺激的な環境の中で、創作における自由と大胆さを獲得した。さらに、古代エジプト彫刻やプリミティヴィズムの影響を受け、幾何学的構築と直接的な削り出しを基盤とする独自の彫刻的思考を確立した。それらの作品は世界各地の公共空間に設置されているほか、旧アトリエを改装したザッキン美術館をはじめ、アントワープ王立美術館、ポンピドゥー・センターなど主要美術機関に収蔵されている。キュビズムの理論を彫刻へと昇華した幾何学的かつ力強い造形は、20世紀彫刻の重要な成果として国際的に高く評価されている。日本においても二科会との関わりを通じて美術界との接点を築き、現在も山梨県立美術館をはじめ国内各地の美術館に作品が所蔵されている。
本作は平面作品でありながら、面の重なりや形態の切り返しには、彫刻を塑造するかのような造形意識が色濃く表れており、ザッキンが生涯追求した彫刻表現の本質を見ることが出来る。複数の人物像が画面中央で密接に構成され、キュビズム的な形態の分解と再構成を通じて、個々の存在が重なり合う関係性が示唆されている。その近接性や配置からは、親密な結びつきや心理的な連関が感じられる。色彩と形態は相互に呼応し、色は輪郭を越えて浸透しながら、物理的な重なりを視覚的なレイヤーとして再構築し、個の境界を曖昧にしている。鋭く力強い輪郭線は彫刻家としての資質を想起させる一方、厚みのある色面とブルーとイエローの対比が、画面に穏やかな生命感をもたらしている。本作が制作された1950年頃は、ザッキンが第25回ヴェネツィア・ビエンナーレでグランプリを受賞するなど、国際的な評価を確立した時期にあたる。同時期には彫刻に加え、グアッシュやリトグラフといった平面作品の評価も高まり、その表現領域を拡張していった。約765点に及ぶグアッシュやドローイングに見られる、印象的な青の色調は、そうした平面作品の魅力を象徴する要素の一つであり、市場においても安定した評価を得ている。山梨県立美術館所蔵の代表的彫刻作品で知られる「三美神」と同年の制作であり、媒体の差異を超えて、人物群の構成や量塊的なフォルムの把握に共通する造形理念がうかがえる。両作を比較することで、この時期のザッキンが人体を単体としてではなく、相互に関わり合う構成体として捉えていたことがわかる。

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