| 技法 | 紙本、彩色 |
| サイン | 右下に落款、印 |
| 額 | 額装 |
| サイズ | 52.5×45.5 cm |
| 鑑定書 | 「ギャラリー雄美」真筆証明書付、共シール(パネル裏) |
本作品は千住博の初期における表現の展開を示す一作である。
『SENJU 千住博画集』(求龍堂グラフィックス、1990年)106ページには、1988年制作の同画題《海の朝》が掲載されている。真っ黒な岩を描き、画面中央に金砂子を効果的に散らした構成などの共通点が認められることから、本作品も同時期に制作されたものと思われる。
1995年、千住はイタリアで開催された「第46回ヴェネツィア・ビエンナーレ」において名誉賞を受賞するが、その評価へと至る過程をたどると、本作品には後年の表現へとつながる重要な要素がすでに見られる。1993年にニューヨークで発表されたハワイ島キラウエア火山を描く連作《フラットウォーター》、さらにその後の《タイドウォーター》へと展開される表現の兆候も、本作品の中に確認することができる。《フラットウォーター》では、暗く描かれた岩と水面とのコントラストによって空間の深みを生み出し、《タイドウォーター》では、波そのものへと対象を絞り込み、黒を引き算として用いることで、限られた要素の中に奥行きや広がりを表現している。
本作品でも、黒く重厚な岩と金砂子による光の表現を通じて、単なる風景描写を超えた空間性への探究が試みられている。後に確立される、自然の要素を抽象化し、コントラストによって深度を表現する独自の方法論は、この時点ですでにその兆しを見ることができる。観念の世界に近い、自然を記号化したような風景表現も現れ始めており、後に世界的な評価を得る画業の展開を予感させる重要な一作である。