東西ニューアート 設立記念公開オークション

LOT 111

ベルナール・ビュッフェ

小さな帽子の道化師

JPY 20,000,000 - 30,000,000
HKD 1,054,900 - 1,582,300
USD 135,600 - 203,300
技法 ミクストメディア、紙
サイン 右上にサイン、年代
額装
サイズ 65.0×50.0 cm
制作年 1978
鑑定書 ギャルリーモーリス・ガルニエのCéline LEVY氏に照会確認済、ギャルリーモーリス・ガルニエのアーカイブに登録済

HIGHLIGHT

ベルナール・ビュッフェは、第二次世界大戦後の混乱と不安のなかで登場したフランスの画家である。戦後ヨーロッパでは抽象表現主義やアンフォルメルなどの抽象美術が広がっていたが、ビュッフェは具象表現にこだわり続けた。太く硬い輪郭線や抑えた色彩を用いて、人間の孤独や苦悩といった内面を描き続けた。

そうした主題を象徴するモチーフのひとつが「道化師」であり、本作もそのシリーズに属する。タイトルのとおり、描かれているのは小さな帽子を被った道化師であるが、その表情は、本来滑稽な言動で人々を楽しませるはずの道化師とは対照的である。肌は白く塗られ、眉や頬、鼻、口元、耳を赤く塗っているが、目元は影を落とし遠くを見つめ、口元は下がりきっている。特に、ビュッフェの特徴である鋭利な線は、より一層哀愁を際立たせる要素の一つとなっており、内省的なイメージを印象付ける。

本作は1978年に描かれたもので、道化師のシリーズ自体は1955年頃から始まっている。長年にわたり繰り返し描かれたことからも、ビュッフェがこの主題に特別な思いを抱いていたことがうかがえる。実際に、彼の道化師はフランス国民の不安や苦悩に寄り添う存在であり、彼自身も「道化師は自分を楽しませてくれる存在」と捉えていた。道化師は単にサーカスの登場人物というような独立した存在ではなく、フランス国民としての作者自身の自画像としての役割もあり、道化師を描くことは自己表現のひとつであり、仮面に隠された内面を描く探求でもあった。

日本では比較的早い時期からビュッフェに対する関心が高く、1973年には静岡県に世界唯一のベルナール・ビュフェ美術館が開館し、道化師のシリーズも多数所蔵されている。また、2020年から2021年にかけては、Bunkamura ザ・ミュージアム(東京)にて大規模な回顧展「ベルナール・ビュフェ展―私が生きた時代」が開催され、ピエロを含む代表作約80点が出品された。もちろん、海外においてもビュッフェの展覧会は数多く開催されており、とりわけ道化師の作品は現在でもコレクターから高い人気を誇る代表的な主題のひとつとなっている。近年のオークション市場においても、その評価の高さがうかがえる。2024年10月にロンドンで開催されたオークションでは、同じサイズ・技法・制作年代の道化師主題の作品が、240,000ポンド(当時のレートで約4656万円)*で落札され、同主題・同技法としては最高額を記録している。同月にパリで行われたオークションにおいても、210,000ユーロ(当時のレートで約4100万円)*で落札されている。こうした結果からも、ビュッフェ作品における道化師の主題は、近年においても根強い人気を維持していることがうかがえる。

*落札手数料を含まない。

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